乳がん検診のご案内
乳がんについて
乳がんは女性が最もなりやすいがんで、12人に1人が乳がんになっています。
誰が乳がんになっても不思議ではありません。私だけは大丈夫と思わないでください。
乳がんの確実な予防法はありませんが、早期発見し早期治療すれば約90%の人が治癒します。
早期発見のために乳がん検診を受けましょう。
乳がん検診について
乳がん検診は、乳がんをできるだけ早期に発見するのが目的です。
乳がん検診には視触診、マンモグラフィ、エコーの3つの方法があります。
・視触診
医師が乳房を診察し、しこりや乳頭からの異常分泌の有無を調べます。
しかし、視触診だけでは早期に乳がんを発見することは難しいのが現状です。
・マンモグラフィ
乳房のX線検査で、乳がん検診に最もよく行われている検査です。
乳房内の腫瘤や、手で触れない早期がんの石灰化を写しだすことができます。
ただし、若い女性(39歳以下)で乳腺が発達している人では、がんと乳腺の区別がつきにくいので、マンモグラフィよりも超音波検査をお勧めします。
※次に該当される方はマンモグラフィを受ける事が出来ませんので、ご注意下さい。
▶︎妊娠または妊娠の疑いのある方・ペースメーカーを使用している方・豊胸術を施行されている方
・エコー(超音波検査)
超音波を使って乳房内の腫瘤やのう胞・乳腺症などの診断が可能です。
マンモグラフィで分からない病変も見つけることができます。 しかし早期乳がんの石灰化が見つかりにくいのが欠点です。
現在、2年に1回の『マンモグラフィ検診』だけが、「乳がんの死亡率を下げる科学的根拠」があり推奨されています。
ただし、少ないですが、マンモグラフィでも分からない早期乳がんが超音波検査で見つかったり、検診と検診の間の期間に乳がんと診断される方もいらっしゃいます。
乳房にしこりを触れる方、乳頭から異常分泌がある方など、ご自分の乳房に普段と違ったところがあれば、自己判断しないで次回の乳がん検診まで待たずに、医療機関(当院なら外科)を受診をしてください。
マンモグラフィ検診だけで大丈夫?
現在、乳がん検診では『2年に1回のマンモグラフィ検診』が推奨されています。
ただし、最近、新聞やテレビで話題になっているように、日本人女性は「高濃度乳房」(乳房は乳腺と脂肪で構成されていて、乳腺が多いタイプを高濃度乳房といいます)が多く、マンモグラフィだけでは異常を見つけにくい場合があります。
すなわち、マンモグラフィでは脂肪は黒く、乳腺は白く写ります。
がんも白く写るため、乳腺が発達している人ほど、白い乳腺のかげにがんが隠れて見つけにくいのです。
今後の検診のあり方が問われています。
そこで検診の新たな選択肢として、マンモグラフィとエコーの併用が期待されています。
また、最新型デジタルマンモグラフィ(トモシンセシス)も乳がんの早期発見に期待が寄せられています。
今までのマンモグラフィは1~2方向から乳房内を観察していましたが、このトモシンセシスでは乳房内を多方向から撮影し、乳房を1mmスライスで観察でき、高濃度乳房の人で通常のマンモグラフィでは乳腺内に隠れて見えなかった病変も、より正確に写し出すことが可能です。
当院では、マンモグラフィの機器更新に際し、乳がん検診の強化を図るため、平成29年3月にトモシンセシス機能を搭載したマンモグラフィを導入いたしました。
トモシンセスについて
宇陀市立病院ではマンモグラフィ・エコー・トモシンセシスを用いた乳がん検診が可能です。
最新マンモグラフィ紹介ポスター(PDF:249KB)
当院での乳がん検診Q&A
結果はすぐ分かりますか?
撮影後日に「マンモグラフィ読影認定医」2名が読影し結果を出しますので、約2週間経過後のご報告になります。
放射線(X線)被ばくによる健康影響はないのですか?
X線検査ですので、微量の放射線被ばくはありますが乳房だけの部分的なもので、マンモグラフィによる健康影響は、ほとんどないと考えてよいと思われます。
私達は日常生活においても宇宙や大地から自然放射線を浴びており、例えば、東京からニューヨークまで飛行機で往復する間に受ける自然放射線は0.1~0.2ミリシーベルトと言われています。
マンモグラフィ1枚撮影時に受ける放射線は0.05ミリシーベルトでとても少ない量です。
撮影によって早期乳がんを見つけることができることのメリットの方がはるかに大きいので、安心して検査を受けてください。
当院のマンモグラフィ装置は販売元と保守点検契約を結び、万全な体制で安心してご利用いただけるよう管理しています。
マンモグラフィ撮影時に痛みがありますか?
マンモグラフィは乳房を圧迫して平たくして撮影するため、痛みを感じる方もいらっしゃいます。
痛みの種類は、たとえば採血検査で注射針を皮膚に刺すと「鋭い痛み」がありますが、それとは異なり「ジワーっと圧迫される痛み」です。
「痛みの程度」に関しては個人差が大変大きくて何ともいえませんが「我慢できる程度」と考えて差し支えないと思われます。
また、月経前は乳房が張ることからより強い痛みが生じます。
月経が始まって2~3日後から1週間くらいの乳房の柔らかい時期に検査を受ける事をお勧めします。
検診の時期は? 月経の前後などで、よい時期はありますか?
女性の乳房は月経周期によって変化しますので、視触診や自己検診は、月経の前は乳房が張るため避けた方がよいでしょう。
また、マンモグラフィ検査時には乳房を圧迫をするため、痛みが増す可能性がありますので、月経が始まって2~3日後から1週間くらいの乳房の柔らかい時期に検査を受けることをお勧めします。
マンモグラフィ検査時間は?
10秒程度の圧迫を左右2方向ずつ、計4回行いますので、圧迫されている時間は計40秒程度です。
姿勢変換なども含め検査終了までは5分程度です。
何歳くらいから検診を受けた方がいいのですか?
乳がんの発生は20歳代では非常に稀ですが、30歳代から増加しますので、早期発見のためには30歳を過ぎたら定期的に(1~2年に一度)検査を受けるのがよいでしょう。
また、ご家族や近親者に乳がんや卵巣がん(子宮がんではありません)が多い方は20歳代後半でも検診を受ける事が望ましい場合がありますので外科受診をお勧めします。
何歳まで乳がん検診は受けたほうがいいの?
40~50歳が好発年齢と言われてますが、すべての年齢層において、乳がんが増えていますので、何歳になっても検診を受けることをお勧めします。
2年に1回の自治体から案内される検診(宇陀市乳がん検診)を受けていれば大丈夫でしょうか?
現在、2年に1回の『マンモグラフィ検診』だけが、「乳がんの死亡率を下げる科学的根拠」があり推奨されています。
ただし、少ないですが、マンモグラフィでも分からない早期乳がんが超音波検査で見つかったり、検診と検診の間の期間に乳がんと診断される方もいらっしゃいます。
ご自分の乳房に普段と違ったところがあれば、自己判断しないで次回の乳がん検診まで待たずに、外科受診をしてください。
授乳中ですが、乳がん検診は受けられますか?
マンモグラフィやエコーにより母乳に影響が出ることはありませんので、検査の実施は可能です。
しかし、授乳中は乳腺が厚みを増すため、触診・マンモグラフィ・エコーのいずれも、授乳期以外の乳房に比べて、異常が見つけにくくなります。
しかし、授乳期だからと言って、乳がんの心配が減るわけではありませんので、授乳期でも乳がん検診を受けるのが望ましいと思われます。
授乳中の乳腺はよく発達していて乳腺濃度が高いため、マンモグラフィでの診断が難しく、また、授乳中の乳房を挟み込んで検査を行うために痛みを伴い、母乳があふれ出てしまうこともがあります。
そのため、授乳中はマンモグラフィを行わない方針の病院・医師も存在します。
また、エコーも授乳期には検査精度は落ちますが、当院では、授乳中の乳がん検診には、触診とエコーをお勧めしています。
乳がん検診は、現在、マンモグラフィ検診が主流ですが、一部ではエコーでの検診も行われています。どう違うのでしょうか?
マンモグラフィは、X線検査で微小な石灰化を発見するのが得意で、X線の透過度の差異、すなわち正常乳腺の濃度とがんの濃度の差で識別する検査です。
『マンモグラフィ検診』だけが、「乳がんの死亡率を下げる科学的根拠があり」推奨され、現在最もよく行われている検査です。
しかし、「高濃度乳房」(※乳房は乳腺と脂肪で構成されていて、乳腺が多いタイプを高濃度乳房といいます)の場合、マンモグラフィではがんも乳腺組織も同様に白く写ってしまうので、両者にコントラストがつかない(がんと乳腺の区別がつきにくい)弱点があります。
一方、エコーは、超音波の反射を利用してコントラストを付けて診断する検査です。
リアルタイムに方向を変化させることにより腫瘤の判別ができます。
ただし、多くの人を短時間に診断する、市町村が行っている対策型の検診手段としては、費用と時間がかかることと、検査する医師や技師の技量に左右されることがあり、現時点では国の指針では推奨されていません。
しかしながら、エコーでは、高濃度乳房においてもがんと乳腺の判別が可能で、マンモグラフィの弱点をカバーできるといわれており、乳がん検診学会でもエコーを今後どのように取り入れていくか検討中です。
トモシンセシスとは?
トモシンセシスはマンモグラフィの一種で、乳房全体を1mm間隔で多数の薄い断層像として表示する技術のことです。
従来のマンモグラフィは乳房を2方向から撮影し観察していましたが、このトモシンセシスでは乳房を多方向から撮影し、乳房を1mmスライスで観察でき、通常のマンモグラフィで乳腺内に隠れて見えなかった病変をより正確に写し出すことが可能です。
日本人女性は「高濃度乳房」(※乳房は乳腺と脂肪で構成されていて、乳腺が多いタイプを高濃度乳房といいます)が多く、マンモグラフィだけでは異常を見つけにくい場合があります。
すなわち、マンモグラフィでは軟らかい脂肪は黒く写り、硬い乳腺は白く写ります。
がんも白く写るため、乳腺が発達している人ほど、白い乳腺のかげにがんが隠れて見つけにくいのです。
トモシンセシスを利用することにより高濃度乳房などで乳腺の重なりによるがんの見落としを減らすことができます。
トモシンセシスを撮影する場合、通常のマンモグラフィも必ず撮影しますので、トモシンセシス撮影の分だけ被ばくが多くなりますが、許容できる範囲内の線量です。
宇陀市立病院で、「宇陀市乳がん検診」は受ける事ができますか?
当院でも可能です。
「宇陀市乳がん検診」では、触診・エコー・トモシンセシスは受けられないのですか?
厚生労働省は、乳がん検診の効果について評価を行い、科学的根拠に基づいて効果がある乳がん検診を勧め、市町村の事業として行われるよう指針を示しています。
現在、多くの各自治体(市町村)はその指針に則り乳がん検診を行っています。
「宇陀市乳がん検診」は宇陀市が厚労省の指針に則り行っている検診です。
1.その指針
検診項目
●マンモグラフィ単独による乳がん検診は、乳がんの死亡率減少効果があり検診では原則として マンモグラフィを行う。
●視触診については、早期発見という観点からは最適とは言い難い。また、視触診を行う医師の確保が困難で、手技に十分習熟していない医師もおり精度が低く、必要性は薄れている。
●超音波検査について
マンモグラフィは乳腺濃度の高い乳房では相対的に診断精度が低下するため、高濃度乳腺が多い日本人女性において、特に乳腺濃度の高い40歳代の検診におけるがん発見率の低さや偽陽性率の高さが指摘されている。
このため、乳がん検診において、40歳代の女性を対象に、マンモグラフィに超音波検査(エコー)を併用する群とマンモグラフィ単独群とのランダム化比較試験が実施されており、マンモグラフィと超音波検査(エコー)の併用群は、マンモグラフィ単独群に比べ、感度及びがん発見率においてその有用性が示されたが、死亡率減少効果については、引き続き検証を行っているところである。
2.検診の対象年齢について
検討会としては、乳がんの罹患の動向や検診による死亡率減少効果、発見率等から判断し、40歳以上とすることが妥当である。
3.検診間隔について
わが国において、マンモグラフィによる検診の適正な受診間隔について、早期乳がん比率と中間期乳がん発生率から検証した結果、2年に1度とすることが適切である。
4.乳がん検診項目に関する提言のまとめ
以上の検討を踏まえ、検討会としては以下を提言する。
1)検診方法
●マンモグラフィによる検診を原則とする。
●視触診については死亡率減少効果が十分ではなく、精度管理の問題もあることから推奨しない。仮に視触診を実施する場合は、マンモグラフィと併用することとする。
●超音波検査(エコー)については、特に高濃度乳腺の者に対して、マンモグラフィと併用した場合、マンモグラフィ単独検査に比べて感度及びがん発見率が優れているという研究結果が得られており、将来的に対策型検診として導入される可能性がある。しかしながら、死亡率減少効果や検診の実施体制、特異度が低下するといった不利益を最小化するための対策等について、引き続き検証していく必要がある。
2)対象年齢
● 40 歳以上とする。
3)検診間隔
● 2年に1度とする。
となっています。したがいまして、当院で「宇陀市乳がん検診」(対策型検診)をご希望の場合、マンモグラフィは受けられますが、視触診・エコー・トモシンセシスは受けられません。
一方、当院で行っている人間ドックは任意型検診です。
検診には対策型検診と任意型検診があると聞きましたが?
現在、がん検診には大きくわけて“対策型検診”と“任意型検診”という2つの種類があります。
対策型検診は、国や自治体が行う検診のことで、「40歳以上から2年に1回のマンモグラフィ検診」を行っています。
地域住民の集団全体の死亡率を減らすことが目的で、どんな検査をどの頻度で行うのが効果的かという科学的根拠と、費用対効果を考慮した国全体の施策です。
対象となる住民や職員のうち、できるだけ多くの人々に検診を受診してもらうことが重要だと考えられているため、検査費用に公的な補助が出て、比較的安価な自己負担額で受診することができます。
しかし、乳がんのリスクは個人個人で違うため、年に1回、マンモグラフィやエコーなどを組み合わせた検診を受けることも重要です。
こうした受け方を「任意型検診」と言い、個人が乳がんから自分を守ることを目的とした検診です。いわゆる人間ドックなどのことですが、個人の希望する時期に、個人が希望する検査方法で検診を受けることができます。
一般的に自己負担額は対策型検診よりも高価です。検査方法や検査費用は受診する医療機関によって異なります。当院で行っている乳がんドックは任意型検診です。